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切なくもあたたかい、ひと夏の恋愛小説『陸と千星』(野村美月著)を読んだ感想

   

野村美月先生の『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』が非常に良かったので、感想・紹介記事を書きました。
この物語は、お互いに家庭環境に問題を抱えている千星と陸が出会い、次第に惹かれ合っていく恋愛小説です。
夏の終わりには、千星が都会に帰るという別れが待っており、読みながらふたりに幸せになってもらいたいと思いつつも、別れの日が近付いてくる切なさを味わえる作品です。


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『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』はこんな人にオススメ!

切なくもあたたかい物語を読みたい人には特にオススメです。
物語のはじめから、ふたりは夏の終わりに別れることがわかっています。そんなふたりが幸せになってくれることを祈りながら、別れの瞬間まで読み進めるのがたまらなく切ないです。

また、野村美月先生の作品が好きだけど、この作品はまだ読んでいない、という人は是非読んでみてください。
『文学少女』や『ヒカルが地球にいたころ……』が好きな人なら、この作品も気に入るはずです。

『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』はこんな話

はじめに、『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』のあらすじを紹介します。

両親の離婚話に立ちすくむ千星。明るく笑ってみせることで、壊れそうな家の空気を辛うじて保ってきた。けれど本当は、三人で一緒にいたいと、素直に泣ければよかったのだろうか……。新聞配達のアルバイトを続ける陸。母は家を空けたまま帰らず、生活のために必要だった。ただ絵を描いていたい、そんな願いも叶わない。それを恨んでも憎んでもいないけれど、今まで自分は笑ったことなどあったのだろうか――。そんな二人が、出会う。切なく繊細な一夏の物語。

エンターブレイン『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』商品詳細ページより

この作品は、家庭環境に問題を抱えているふたりの少年少女の恋愛物語です。
離婚しようとする両親に挟まれながらも、泣きたい気持ちをおさえ、笑顔で家族を繋ぎ止めていた少女、千星。
息子を放って男の所に入り浸り、振られた時だけ息子に頼る母に振り回され、笑うことを忘れた少年、陸。
夏休みが終われば千星は都会に帰ってしまうのですが、その短い期間の中で、立場は違えど共通点のあるふたりが出会い、次第に惹かれ合っていきます。

そんな『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』を読んだ僕の感想を、これから紹介していきます。

『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』の感想

『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』は、とにかく切なくもあたたかい物語で、読み終わった後は気持ちの良いためいきがつけました。
この作品を読んで僕が強く思ったことは、次のふたつです。

千星と陸の人柄に、思わず幸せを願いたくなる

千星と陸はお互い家庭環境に問題を抱えています。
作中にはふたりが深く落ち込むようなシーンもあり、その部分は読んでいて辛い気持ちになってきます。
それでもどんどん読み進められたのは、このふたりが幸せになって欲しいと思えるような子だからなんです。
千星と陸のふたりが、くっつかなくてもお互いに幸せになってほしいな、と思いながら1ページ1ページ読み進めました

作中で千星と陸の接点はほとんどなく、会話できる時間は、陸が千星の滞在している別荘に新聞を届けにくる朝の短い時間だけなんです。別荘に来たお嬢様と新聞配達の少年という不思議な関係ではありますが、家庭環境に問題を抱えているふたりにとって、ふたりが会える朝の短い時間は、心安らぐ時間でもあります。
千星と陸がお互いのことを深く知ることはないのだけれど、その短い時間での相手の印象から、お互いがお互いのことを幸せな家庭で育っている人だと想像するんです。実際はどっちも辛い環境にいるんですけどね。

千星と陸のふたりとも、自分は辛い環境にいるけれど、相手は幸せな家庭で暮らしている、と想像しているわけです。だけど、相手を羨むのではなく、千星と陸のどちらとも、あの人みたいに幸せに暮らしている人がいると思えば、今の辛い環境の中でも頑張れる、ということを考えるような子なんですよね。
だからこそ、このふたりには、なんとしても幸せになってもらいたいな、と強く思うのです。

離れ離れになることがわかりきっているふたりの関係が切ない

そんな幸せを願いたくなるふたりは、お互いにお互いのことを意識しています。
ですが、夏休みが終われば千星は都会に帰ってしまうので、物語のはじめからこのふたりは離れ離れになることがわかりきっているんです。
幸せになってほしいふたりの登場人物がいて、お互いにお互いを必要としているはずなのに、夏の終わりには別れが待っている、という事実がたまらなく切ないんですよね。

ふたりの接点が、朝の新聞配達の時間という短い時間しかないこともその切なさを増しています。
ふたりにもっと接点があれば、ふたりはもっと関係を深められると思います。だからこそ、そんなふたりに話す時間をもっと与えてあげたい、相手のことを想像するだけじゃなくて、ちゃんと理解しあう時間を与えてあげたい、って思うんです。
そう思うんですが、朝の短い時間以外に接点はほとんどないまま別れの日はやってきます。
「このままただ別れるしかないんだろうか、そんなの悲しすぎるよな……」なんて思いながら読み進めていきましたが、終盤の展開からの最後の1ページへの繋ぎ方は本当に心に響きました。気持ち良いためいきをつけたのは久々です。

オチについては触れてしまうと作品の良さを損なってしまうと思うので触れません。
ですが、これだけは言えます。この物語は切なくもあたたかい、すてきな物語でした。
野村美月先生はこういう作風の作品が本当にうまいです。

終わりに

この記事では、『陸と千星~世界を配る少年と別荘の少女』を読んだ僕の感想を紹介しました。
切なくてあたたかい作品や、野村美月先生の作品が好きな人にはぜひとも読んで欲しい作品でした。

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